石油資源の探査を目的としたコンピュータによる堆積盆地モデリングシステムがいくつか開発されている。このようなモデリングシステムに与える条件の中で、熱史は特に重要な条件であるため、これまで数多くの熱史評価法が検討されてきた。地球物理学的な方法論によって得られる熱流量史は精度が低いが、熱流量変化のパターンについて重要な情報を与えてくれる。一方、地球化学的な方法論は精度が高いが、熱流量の変化パターンについてあまり重要な情報を与えてくれない。本研究の目的は、コンピュータシステムを介して、さまざまな熱史評価法がインタラクティブ関連し、それぞれの長所を生かした新しい熱流量史評価補正法を確立することにあった。 本研究では、熱流量史を評価補正するための温度指標を確立するため、さまざまな温度指標の中で、特の有効な指標と考えられるビトリナイト反射率、ステラン異性体組成、メチルフェナントレン指標に注目した。これらの有機物温度指標のカイネティック特性を明らかにすため、基礎試錐「新潟平野」、基礎試錐「高田平野」から得られた坑井試料を用いて、予想される岩石の温度史とこれらの温度指標の変化について解析した。その結果、これらの温度指標のカイネティックパラメーターを求めることができた。さらに、これらの温度指標と堆積盆地のタイプに基づいた熱流量史評価補正法について考察するため、ブルガリア、黒海西部堆積盆地を例として、実際的な検討を行った。地質学的に評価された堆積盆地の進化タイプに特有な熱流量の変化パターンと地化学温度指標をインタラクティブに関連させることによって、これまで難しかった高精度の熱流量史評価が実行できることを示した。本研究によって、地質、地球物理学、地球化学上の知識インタラクティブに関連させた新しい熱流量史評価補正法の基礎を築くことができた。
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