今年度は、西南日本外帯の白亜紀低温高圧型三波川変成岩の産状について検討し、その三次元形態の解明を試みた。特に三波川帯と秩父帯との境界問題について古典的フィ-ルドの一つである四国中央部、そして西南日本で唯一、三波川帯と四万十帯とが広域に隣接する地域である紀伊半島中央部において、三波川帯と周囲との境界の正確な位置および形態の決定を試みた。その結果、以下のような新しい事実が判明した。 1.三波川帯の南縁部の変成岩は約115Maの変成年代をもち、その構造的上位にはより古い変成年代をもつ秩父帯の弱変成ジュラ紀付加体(約140Ma)や先ジュラ紀の黒瀬川帯の地質体(200Maより古い)が累重する。 2.三波川変成岩の構造的下位には、より若い形成年代をもつ四万十帯の低変成後期白亜紀付加体が産する。 3.三波川変成岩は全体として、上下を共に断層で境されたほぼ水平な薄い板状地質体、すなわちナップとして産する。 4.西南日本外帯の三波川帯とは、構造的上位のジュラ紀付加体および先ジュラ紀地質体のナップの分布域内に、その下位に産する三波川変成岩ナップが地窓として露出する領域として定義される。 5.三波川変成岩と上下の弱度成付加体との間には数kbを超える変成圧力の差が認められ、間に産する高圧変成岩ナップは、変成作用のピ-ク後に構造的に狭み込まれた(低圧領域に上昇した)とみなされる。 これらの結果の一部については、すでに別表に示した学術論文として報告した。
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