研究概要 |
当初研究計画に従って,本年度は主として神岡鉱山に隣接する船津・下之本花崗岩体の野外調査を実施した。研究経費のうち旅費は主にこの野外調査に使用した。設備備品費ではジョ-クラッシャ-を設置し,岩石分析用試料の粉砕に利用している。パソコンはデ-タ処理・論文作製に活用している。これらによる成果は以下のとうりである。 従来の飛騨帯中生代前期花崗岩に関する一般的見解は,各岩体とも性質・貫入時代ともほぼ一様であり,かつ岩相上比較的早期の下之本型と後期の船津型に2分する,いうものである。今回模式地である神岡鉱山東方での精査により,(1)船津岩体と片麻岩体との間にこれまで未知の細粒花崗岩が分布し,圧砕性の眼球片麻岩や眼球花崗岩を伴う,(2)それらは下之本岩体の周囲で著しく再結晶し,分布の上で下之本岩体に切られる,(3)従来の船津岩体はそれらと一連の岩体を形成する,(4)従って従来の常識とは逆に下之本岩体が船津岩体を貫く可能性が大であること,などがわかった。また圧砕作用との前後関係から、飛騨帯の中世代前期花崗岩類は時期的に一様なものではなく早期の三畳紀(210Ma前後)と後期のジュラ紀(180Ma)のものとに大きく2分できる可能性が高いことがわかった。これらの点はさらに次年度に引きつづいて精査を行い確認したい。 以上の花崗岩の調査に加えて、神岡鉱床地域内で鉱床の母岩として産する透輝石ーヘデンベルグ輝石を含むミグマタイト質優白質岩についても産状や単斜輝石組成を検討した。これについては既発表ずみのデ-タに加えて,一応の結果を見たので現在公表準備中である。
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