研究概要 |
地質調査:四国カルスト全地域と中国帯の一部について緑色岩類の分布と産状を詳細に調査した。従来,同一層準のものとして一括して扱われてきた緑色岩類は明かに変成度を異にする二群,a)低度の変成作用をうけ緑色片岩化しているもの,b)塊状で変形も変成岩化もしていないもの,に区分される。したがって当地域の緑色岩類は成因を異にする複数の地質体に属する海洋起源の火山岩類といえる。大野ヶ原付近の緑色岩類は変形・変成作用が軽微〓な枕状溶岩,塊状溶岩およびハイアロクラスタイトで原岩の構造が部分的によく保存されている。 四国カルスト緑色岩類の岩石化学的特微:上記の緑色岩類の主化学元素,微量元素および希土類元素について,常光X線法と熱中性子放射化分析法を用いて定量した。主化学成分のうち,SiO_2に対する全アルカリ量,TiO_2,P_2O_5の割合から,すべてアルカリ玄武岩(海洋島型)に区分される。鏡下の観察から微班晶単斜輝石がパ-プルオ-ジャイトであることも,この分類を支持する。希土類元素のコンドライト規格パタ-ンを内帯の帝釈台緑色岩と比較すると明瞭な差が認められる。帝釈台緑色岩のうちアルカリ玄武岩では,La,Ceなどの濃縮が認められ,パタ-ンはYb,Luに向って降下するが,ソレアイト玄武岩では軽希土類の濃縮は弱く,全体として,わずかに重希土類に傾斜する特徴をもつ。一方,四国カルストのアルカリ玄武岩では,帝釈台にみられるようなLa,Ceの著るしい濃縮は認められず,むしろソレアイト玄武岩と似たパタ-ンを示す。この特徴はSr含量にも表われており帝釈台では600〜900ppmで,四国カルストでは一例を除き300ppmを超えない。これらの差が単なるマグマの分化の程度の差によるものか,海山の性質の差によるのかを今後,検討する必要があり,もし,後者であれば海山列の考え方に再検討の必要性を示唆することとなろう。
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