| 研究概要 |
プレ-トの沈み込みにより形成された付加体の研究は,これまでにも多数行なわれている。しかし,付加体を構成する岩石の物理的な性質に基づく力学的な側面からの研究は少ない。研究代表者は,これまで,四万十帯白亜系堆積岩について,物理的および力学的特性を明らかにし,その差異に基づいて,付加体の形成過程を議論してきた。
本研究では,それを一歩進めて,四万十帯第三系堆積岩について岩石物性を検討しようとするものである.とくに,付加体形成におけるはぎ取り作用における物理的条件を明らかにすることに主眼をおいた.
そのために,高知県室戸半島に分布する始新統室戸層および同幡多半島に分布する始新統来栖野層について,(1)野外地質調査により,それらの構造的特徴を明らかにすること,(2)構造的枠組みの明瞭になった地帯から,砂岩を中心に試料の収集を行なうこと,(3)それらについて岩石物性を明らかにするという研究方法を取った。
その結果,四万十帯始新統には,大規模な剪断帯に特有な,種々の褶曲・断層構造が発達すること,とくに,室戸層には見事なデュ-プレックス構造が存在することが明らかとなった。従って,これらの地層は,海溝下部斜面ではぎ取り作用により形成された付加体であることが明らかとなったので,種々の構造形態を取る部分の砂岩のサンプリングを行なった。それらの岩石物性と比較するために,伴なわれる海段や前弧海盆の砂岩のサンプリングも行なった。それらについて岩石物性を検討中であるが,これまでに,密度・空隙率・弾性波速度などの物理学的特性に関する物性値を得ている。三者の砂岩には,物性値における差異が存在することが明らかになってきているので,今後,これらの岩石強度など力学的特性を明らかにして,付加体形成における構造地質学的研究をまとめる積りである。
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