研究概要 |
平成3年度には,金沢市の犀川沿いに露出する大桑層から産出した貝形虫化石群集を,主成分分析法を用いて詳細に解析した。そして抽出された主成分を,主として前年度に解析を終えて報告した富山湾における半深海生貝形虫群集の水深分布の特性に準拠して解釈した結果,約120万年前のCobb Mountain逆磁極期に暖流の著しい流入のあったことが明かとなった。この現象をCobb Mountain spikeと命名するとともに,詳細な検討結果をAlcheringa誌に投稿中である。 また,大桑層下部の貝形虫群集を調べた結果,120ー130万年前にほぼ10万年周期の環境変動のあったことが示唆されるに至った。10万年周期の変動は70万年前以降に従来知られていたものであるが,それよりも約50万年遡る大桑層下部ににられる変動は,半深海ー陸棚間の水深的な変動と湾域ー公海間の環境的な変動として把握される。この知見は平成4年1月に開催された日本古生物学会年会で講演し,現在最終的な原稿を準備中である。 白亜紀の貝形虫化石は,従来本邦では全く知られていなかったが,北海道中南部のセノマニア-カンパニア期から貝形虫化石を近年検出し,比較研究をした結果,テチス海が当時少なくとも北海道にまで広がっていたこと,極縁海との連絡が断たれていたこと等が明確となった。この知見はSaito Hoーon Kai Spec.Publ.ですでに報告した。 以上は,紙面の制約を考慮して,詳細な手続きは割愛し,成果の概要を中心に記した。
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