トリアス紀コノドントの混在群集には、宮崎県西臼杵郡高千穂町の上村石灰岩や、愛媛県東宇和郡城川町の田穂石灰岩の例のように、トリアス系の石灰岩シーケンスの中に存在する場合と、岐阜県郡上郡八幡町のペルム系安久田石灰岩の裂罅を充填するように発達する赤色カルカレナイトや栃木県安蘇郡葛生町の唐沢石灰岩部層の裂罅や洞窟を充填するラミネート石灰岩から産するものと、まったく異なった2つのタイプが存在することがわかった。上村石灰岩や田穂石灰岩の例では、Carinella mungoensis帯すなわちアニシアンからカーニアン前期にかけて、海上比較的平坦な面が、海水準が上下に脈動するような環境下で侵食と堆積をくり返しコノドントが濃縮・残留堆積物として混在したものである。 安久田層や唐沢石灰岩部層の裂罅を充填するカルカレナイトやラミネート石灰岩は、海山上に堆積した、ペルム系石灰岩上にトリアス紀に堆積した堆積物が海水準の変動をより敏感に反応し、上村石灰岩や田穂石灰岩にみられるような混在群集を形成していった。ただし後期ラデイニアンから初期カーニアンのNeogondolella folimtaが圧倒的に多くこの時期海水準の上昇期にあったことがわかった。ノーリアン最後期から中期ジュラ紀前のある時期に海山はプレートの移動と共に当時の日本列島の近くに形成されていた海溝に達し、しだいに崩壊しながら海溝に落ちて行った。その時カルカレナイトやラミネート石灰岩はペルム紀石灰岩の裂罅を懸濁流と化し埋めていった。この時コノドントは再び混在群集を形成した。今回の研究から、コノドントの混在群集から海水準の変動を読み取ることは可能であることがわかった。ただし、海山上の堆積物は、海山が海溝に落ちて再堆積するため、海水準変動の解像力が悪い。
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