本研究は貝殻集積層を多量に有し、それらから多くの進化古生物学的研究材料を提供してきた西南日本太平洋側に分布する掛川層群(静岡県)、唐浜層群(高知県)、宮崎層群(宮崎県)を研究対象とした。唐浜層群では、Phanerolepida pseudotransenna(巻貝)の産状記載を行い、その分類を明らかにした。また、掛川層群大日層の外浜堆積物と推定される層準に挟在し、HCS層に整合に覆われる貝殻集積層のブロックサンプリングを行い、層準ごとの貝殻の種構成、貝殻の大きさの変化、および貝殻の配列傾向を調べた結果、以下の点が明かとなった。 1.この貝殻集積層には浅海の砂底、砂泥底、岩礁に生息する種が混在して産し、また、特に内湾度の高い種が産出しないので、外洋に面した浅海に生息する種から成る混合群集である。 2.貝殻の配列を計測した結果、貝殻には配列傾向が存在し、また貝殻集積層の上部と下部では、配列傾向が異なることがわかった。 3.流水下における貝殻配列の従来の研究結果と比較したが、これらを元に解釈すると多くの矛盾が生じることから、従来行われてきた実験や観察とは異なった流速や堆積様式を仮定する必要があることがわかった。 4.この貝殻集積層の貝殻の配列は、ほぼ北西から南東に流れる、秒速1mを超えるような貝殻を多量に含んだ密度流が極めて短時間に堆積したと仮定すると合理的に説明ができる。 5.貝殻集積層を形成した密度流は、ストームピーク時における引き波と地衡流との複合流が引き起こしたと考えられる。
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