研究概要 |
今回,加速器質量分析という新しい測定法に基づくタンデトロン分析計を用いて,層序から3万年前以上古いとわかっている地層から採取した炭素試料について年代測定を行なった。その結果,次の事が明かとなった。 (1)長野県木曽郡王滝村の滝越湖成層(層厚45メ-トル)から採取した樹木片について年代測定した結果,地層の深度が増すに従って, ^<14>C年代値は5万年前から連続的に古く成って行くが,年代値が6.3万年前を越えると,それ以上古い値にはならずほぼ一定値を示す。これが,測定可能な年代値の限界を示すと考えられる。 (2)北海道夕張郡由仁町で1990年7月にマンモスの化石が発見された。これは陸上で発見された唯一のマンモス化石であり,その年代は極めて重要である。今回,マンモス化石自身ではなく,マンモスの産出層から採取された木材の年代を測定した。得られた ^<14>C年代値は58,450±1610年前と,加速器法により測定可能な限界の年代(約6万年前)に近く,むしろ年代の下限値と考えた方が良いかも知れない。地質層序からは約7万年前と推定されている。 (3)神奈川県秦野市の東京軽石流堆積物中から採取された木炭の ^<14>C年代値は,約5.2万年前と得られた。東京軽石の降下年代はフィクショントラック法により49000±5000年前と得られており,異なる年代測定法で互いに良く一致しているといえる。測定誤差は加速器法の方がずっと小さくなっている。 (4)御岳山起源の木曽川泥流堆積物は,中部地方の地層の編年においてカギ層として用いられており,その年代値はきわめて重要である。従来,この層は,約2.7万年前に堆積したものとされてきたが,今回岐阜県美濃加茂市八百津町で木曽川泥流中から採取した樹木片の加速器法による年代測定により,同層の堆積年代は約5万年前と,従来の年代値より2倍も古いことが始めて明かとなった。
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