研究概要 |
タンデトロン加速器質量分析計を用いる^<14>C年代測定法の特徴の一つは,4〜6万年前の古い試料の年代測定が可能となったことである.今回,この4〜6万年前の古い試料の年代測定の信頼性をテストするため,本研究を企画した.地質学・地理学・地形学の研究者に,研究の対象とされている露頭を案内して頂き,関連する年代測定試料を採取した.測定対象とする試料は,層序関係が明白なものが適当であることから,主として,広域テフラと関連したものを多く選んだ.本研究により,タンデトロン加速器質量分析計による古い年代の試料の測定に関して以下のことが明かとなった. 1.4〜5万年前台の^<14>C年代値については,年代値の大小と地層層序の上下関係とが,きわめて調和的である. 2.6万年前を越えると,年代値の飽和現象が現れ,層序の上下関係と年代値の大小とが合致しなくなる.すなわち,より下位の地層から得られた試料では,本来年代値は連続して古くなるはずであるが,6万年前を越えるとそれ以上古い年代値を示さなくなる.これは,^<14>Cを全く含まないはずの鉱物グラファイト試料が6〜7万年前の見かけの年代値(平均値は65,080 y.B.P.)を示すことからも予想されることである. さらに,本研究において,^<14>C年代測定値を他の年代測定法による結果と比較することができた.東京軽石(TP)・東京軽石流堆積物(TPfl)についてフィッション・トラック法(FT法)と,御岳火山噴出物については,カリウムーアルゴン法(K-Ar法)と比較でき,両者の年代値によい一致が見られた.詳細については,成果報告書に収録の論文別刷を参照頂きたい.異なった年代測定法の間の一致性のテストは,今後積極的に進めるべき研究課題の一つである.
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