研究概要 |
1.日本産板皮類化石についての分類学的・形態学的・組織学的研究:岐阜県上宝村の福地層群(下部デボン系)から発見された棘胸目に属する板皮類の皮甲化石について,パラエアカンタスピス科のRomundina sp.indet.の肩帯を構成する棘板・前外側板・前側腹板などであることを報告した(大倉・後藤,1992)。これらの骨板がその縫合部が不明瞭なほど癒合していること,骨板の上に星形の結節が存在することなどの特徴は,カナダの北極圏の下部デボン系産のRomundina stellina(0rvig,1975)に一致しているが,結節の数が多く,棘が長く内側に曲がっている点では,異なっている。また,皮甲の研磨標本を作成して光学顕微鏡で観察した結果,中心の軟骨様組織,海綿骨様組織,最表層の結節をつくる暗色の組織から構成されていることがわかった。 2.日本産の初期中生代・古生代の魚類化石に関する総括:日本産初期中生代および古生代の魚類化石は,22属26種に分類される(Goto,1992;1993)。その内訳は,板皮類については下部デボン系からRomundina sp.1種,板鰓類については,ペルム系からSymmorium sp.など9種,三畳系からHybodus sp.など3種,ジュラ系からAsteracanthus sp.など3種,コクリオダス類についてはペルム系からSandolodus(Deltodus)sp.など2種,ペタロダス類については石炭系からPetalodus allegheniensisなど3種,ペルム系から?Petalorhynchus(Petalodus)sp.など6種である。今後の発見と研究により,その種類と数はさらに増加することが予測される。 3.脊椎動物における硬組織の起源と進化に関する研究:原始無顎類において過剰なカルシウムの排泄物として形成された皮甲(外骨格)は,高等動物の皮骨・歯として受け継がれる一方,初期には軟骨であった内骨格は次第に骨に置き換えられ,陸上での移動に必要不可決の支持組織となった(Goto,1993)。
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