研究概要 |
珪藻の進化速度に及ぼす中新世海洋大循環の影響の評価を、2年計画で行っている。初年度にあたる今年度は、進化速度をモニタ-する珪藻種の分類学的再検討、使用するコアの生層序学的検討など、形態計測上のデ-タをだすことより、基礎的な作業に重点を置いて研究を進めた。具体的には、1.北太平洋の中新世海洋大循環をモニタ-するコアの選択;2.コアの生層序学的検討;3.進化速度をモニタ-する殼面の褶曲した一群の珪藻種Thalassiosira yabei グル-プの分類学的再検討などを行った。なお、分類学的な再検討は、研究遂行時に当初の計画に追加した。また、分類学的検討は、中新世を代表する種に限らず、現生種も含て行った。 海洋大循環をモニタ-するのに選ばれた2本のコアは、三陸沖とカリフォルニア沖で国際深海掘削計画(IPOD)により採取されたものである。生層序学的検討の結果、無堆積の期間をはさむものの、中新世のT.yabei グル-プの産する層準において、時間対比の可能な6珪藻化石帯が識別された。それらは、Denticulopsis hyalina,Denticulopsis hustedtii,Denticulopsis nicobarica,Denticulopsis praedimorpha,Denticulopsis dimorpha そして Denticulopsis katayamae の各化石帯である。そして、進化速度をモニタ-する珪藻種群T.yabeiグル-プの分類学的検討の結果、進化速度を明らかにする際の単位として、10“type"が形態上区分された。これら“type"は形態上漸移する2つのグル-プ(T.temperei complex,T.flexosaーyabei complex)を含めて、少なくとも7種(種群)からなる。次年度以降の進化速度のモニタ-は、これら形態上区分された“type"の時空分布を基礎に解明される予定である。
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