二酸化マンガン鉱物を加熱した時に放出される分解や表面の吸着に由来するガス成分およびその温度との関係等を検討した。試料は天然の鉱物と合成試料を用いた。測定は赤外線イメージ炉で加熱し放出されるガス成分を四重極質量分析計に導き測定した。その結果、100〜350℃、400〜450℃、600〜700℃の3つの温度領域でCO_2の放出が観察された。このうち100〜350℃の放出は合成、天然産の試料に限らずすべての二酸化マンガンで観察され、固体表面に吸着していた成分と考えられる。400〜450℃と600〜700℃の放出ピークは合成試料にのみ観察され、中間生成物である炭酸マンガンの残留や炭素電極に由来するものである。表面吸着のCO_2は大気中に放置すると大気中のCO_2を吸着していることが確認された。炭酸ガスを吸着する酸化マンガン鉱物の新しい物質を探索する目的で、ラムスデル鉱を還元してラムスデル鉱(MnO_2)とグラウト鉱(γ-MnOOH)との中間相に当たる鉱物を合成しその結晶構造を検討した。合成実験には水熱合成装置を用い、ラムスデル鉱と金属マンガンに水を加え150℃1000気圧で10日間保持した。この時の反応は8MnO_2+2H_2O+Mn→4Mn_2O_3(OH)+MnO_2と示される。反応途中の生成物を調べると、ラムスデル鉱と中間相とグラウト鉱の3相は共存することなく、ラムスデル鉱と中間相あるいは中間相とグラウト鉱の組合せとなる。すなわちこれらの3相間に固溶体は存在しない。リートベルト法により構造の精密化をおこなった結果、中間相はラムスデル鉱型の結晶構造を有することが明らかにされた。単位格子にマンガン原子が4個存在すると組成式はMn^<3+>_2Mn^<4+>_2O_6(OH)_2となる。すなわちラムスデル鉱の4個のMn原子のうち2個が3価になり、8個の酸素のうち2個がOHに置換した構造と推測される。
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