研究概要 |
平成3年度は主としてマグネシウム珪酸塩鉱物についてダイヤモンドアンビル高圧セルを用いた高圧下でのX線回折実験を行った。 1.Hedenbergite,Ca(Fe,Mg)Si_2O_6の単結晶(大きさ130x83x60ミクロン)をダイヤモンドアンドビル高圧セルで6.3GPaまで加圧し、6.3GPa、5.1GPaの各圧力のもとで、Mokaの特性X線を使用してX線写真をプリセッシヨンカメラで撮影した。HedenbergiteはZhang et al.(1989)によりメスバウア-スペクトルの四極分子裂ピ-クの変化から4GPaに相転移の存在することが知られているが、高圧相の空間群が知られていなかったため、どの様な結晶構造に転移したのか確定していなかった。本研究において、6.3GPaおよび5.1GPで撮影したX線写真に低圧相の空間群C2/cの消滅則を破る反射が記録された。このことから、高圧相の格子タイプはP格子であることが判明した。これによりHedenbergiteの4GPaにおける圧力誘起相転移は、加熱によるP2_1/cからC2/cへの相転移と同様なPーC転移であることがわかった。 2.またプレ-トテクトニクスにおける沈み込み帯(subduction zone)に関連して重要な、高圧含水珪酸塩鉱物のSuperhydours phase B,Mg_<10>Si_3O_<14>(OH)_4の結晶構造を解析し決定した。35x59x83ミクロンの大きさのsuperhydrous phaseBの単結晶のX線回折強度を四軸自動回折計で測定しその結晶構造を決定した。 3.地球の下部マントルにはStishovite,Sio_2がさらに高圧相に転移した相が存在する可能性があり、それはFluorite,CaF_2型あるいはその高圧相と予想されている。Fluorite,DaF_2を室温で加圧すると8ー8.5GPaで相転移することがJamieson and Dandekar(1969)により報告されているが、詳細は不明のため本研究ではその解明のため実験を行った。Fluorite,CaF_2の単結晶(大きさ35x35x50ミクロン)をダイヤモンドアンビル高圧セルで9.0GPaまで加圧し8ー8.5GPaの相転移を確認した。放射光による超強力X線と四軸自動回析計を使用してX線回折強度デ-タの収集の試みを現在続行中である。 4.圧力を精度良くかつ迅速に測定するためにルビ-ケイ光測定装置を制作した。焦点距離300mmの分光器を使用しフオトンカウンティング測光による出力をパ-ソナルコンピュ-タに入力して処理し、圧力の測定精度は0.1GPaである。
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