本研究ではアレンデ隕石中の白色包有物を対象として太陽系外物質の存在の有無を重点的に探査した。その成果は以下の様にまとめられる。 (1)白色包有物中の元素濃度を1μmの分解能で定量マッピングを行い、分布図を作成した。その結果、各構成鉱物の結晶成長の様式が明らかになった。 (2)酸素同位体比を精密測定するために、新しくカスプ型負重イオン源を設計・製作し、2次イオン質量分析計に取りつけた。 (3)カスプ型負重イオン源から発生する金の負イオンを1次イオンビームとして用いることにより、鉱物試料中の酸素同位体比の局所分析法を確立した。 (4)この酸素同位体比局所分析法を白色包有物中の各鉱物種の分析に適用した。その結果どの鉱物種においてもその粒内の酸素同位体比は一定の値で均一であることが判明した。しかしながら、異なる鉱物種の間では同位体比は異なっている。つまり、各鉱物種はその鉱物独自の酸素同位体比を有しており、その間の関係は化学平衡により説明することができない。 (5)(1)と(4)の結果より、白色包有物の成因は次の様に考えられる。A.起新星爆発した星の囲りで、スピネルがまず結晶化する。B.そのスピネルが原始太陽系星雲に近づいたとき、輝石が結晶化を始めた。C.輝石とスピネルが完全に太陽系星雲にとり込まれた後、その囲りに液滴が凝縮をはじめ、その液体からメリライトと針長石が品出をはじめた。 (6)以上の結果より、白色包有物中のスピネルは、太陽系外物質であると結論できる。
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