研究概要 |
バクテリア起源磁鉄鉱については,鉱物学・結晶学的問題,課題があるとともに,地球科学的視野でみた境界領域的な興味あるテ-マもある。初年度の今年は,日本海の深海推積物を用いて,以上の2点の検討をすすめた。用いた試料は地質調査所で収集された日本海の広い海域の表層堆積物と,2ヶ所の約5mの長さのコアサンプルである。これらを主にX線ディフラクトメ-タ-と高分解能・分析電顕で検討し,堆積物中のMarine mineralsといえるものをキャラクタライズした。粘土鉱物種を同定すると,Smectite,chlorite,illite,kaolin mineralが認められた。このうち,Smectiteがコアサンプルの100cmあたりの深度のものに比較的多いという特長があった。又、gypsumも層準,地域にかかわらず,比較的頻繁に認められた。バクテリア起源磁鉄鉱は電顕により検索し,いくつかの試料でその存在が確認された。西太平洋のを調べたところではOctahedrol typeのものが卓越していたのに対し,この日本海産のものでは,teardrop type,rectangular type,等様々の形態のものからなることがわかり,これが日本海の一つの環境を反応しているのと考えられる。teardrop typeで2000Å以上にも達するものが見つかったり,'teartrop'の太い方の形態でバラエティ-がありそうな点,'teardrop'の伸びの方向はa軸方向をとる,等の特長が見られた。又組成的には,西太平洋産のoctahedraltypeがTiを少ないといえわずか含むのに対し,日本海産のものはTiをほとんど,含まない。又100cmあたりの深度でmagnetosomesがやや多く見出されるようである。一般に大洋でgypsumは存在しないといわれ,日本海が閉じた環境であることを示唆し,100cm程度の堆積物は後氷期の時代に対応し,これらの特長的鉱物は,海水準上昇・冷水の大量流入という環境変化に対応している可能性が推定された。
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