研究概要 |
バクテリア起源磁鉄鉱は淡水性・海洋性の,あるいは土壌中からもバクテリアが見いだされ,また堆積物中から化石としての磁鉄鉱が報告されてきたが,本研究では,いくつかの成果をあげてきたと言える。本年度はこれらについてこれまでの検討結果についてまとめの段階にも入り,幾つか研究報告として発表するとともに,公表準備の論文化を進めた.これまで多くの課題のうち,太平洋・日本海の堆積物中のバクテリア起源の磁鉄鉱についての検討を行い,これらの素材を用い鉱物学的特徴を明らかにすることに力を入れてきた,といえる.公表準備をすすめたものとして,現生の走磁性バクテリア中にふくまれる磁鉄鉱以外の鉱物の解明が一つ特筆できる.つまりマスカナイト,硫酸アンモニウムの結晶が走磁性バクテリアに確認されたことで,これはこのバクテリアの代謝機構,磁鉄鉱の生成機構とも関連して重要な意味があろうと考えている.また佐藤を中心として環境変動との関連を他の指標;同位体による温度変化,有機物量変化等でみた結果も重要である. さらに今後の方向をさぐるため,地球科学の立場から関心もある古い堆積岩中のバクテリア起源磁鉄鉱の存否をたしかめる研究も進めた.試料はオーストラリアのストロマトライトの堆積物で,これからは形態的にバクテリア起源磁鉄鉱の可能性のある磁鉄鉱がみいだされた.これが確認されれば,世界最古の化石となる可能性がつよい.現在まだその産出量がすくなく,確定的に確認されたとはまだ言えない.現在ひき続き検討をすすめている.
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