研究概要 |
本年度の野外調査による採集したスメクタイト試料につき、その産状とスメクタイトの鉱物学的性質の関係を検討し、次の成果が得られた。 1.ベンナイト鉱床や火山岩の変質帯から採取したスメクタイト試料には無定形の火山ガラスに近いものから結晶度の高いものに至る種々の変質段階のものが得られた。 2.採取試料に含まれるスメクタイトの化学分析に基づき、結晶格子中の同形置換および層荷電の分布を調べた結果、これらのスメクタイトはモンモリロナイトの端成分に近いものからバイデライト成分の卓越するするものまで種々の組成のものが含まれることが明らかになった。 3.ベントナイトおよび酸性白土鉱床中のスメクタイトの交換性陽イオンは、鉱床の下位の層準ではNaイオンが卓越し、上位の層準ではCa,Mgイオンが多くなり、最上部の地表付近ではアルカリ、アルカリ土類が溶脱されて水素イオンに置換されていることが明らかになった。 4.スメクタイトのイオン吸着能はスメクタイトの結晶の三層構造の層荷電の値に依存する。荷電の起源が主に四面体にあるスメクタイトは吸着能が小さくなる傾向を示した。 4.ロ-ダミンB等の有機試薬の吸着により、スメクタイトが鋭敏な蛍光発光を示すことが明らかになった。この発光は顕微鏡下で観察される極微量の試料についても充分に測定可能である。 5蛍光光度法による吸着能の測定は、共存物の多い試料でも測定出来るという利点があるが、一方スメクタイトの層間イオンの種類により有機試薬の吸着能に微妙な差異があり、今後この点の詳細な検討が必要である。
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