研究概要 |
前年度に続きスメクタイトを主成分とする粘土鉱床、特にベントナイトおよび酸性白土鉱床から採取したスメクタイトの鉱物学的性質を検討した結果、次の成果が得られた。 1.スメクタイトにはNa,Ca,Mg,Hなど種々の交換性陽イオンが含まれるが、鉱床の産状によりその組成が異なることが明らかになった。また鉱床中には種々の炭酸塩が共生鉱物として含まれており、一般にNaタイプのスメクタイトはより多量の炭酸塩鉱物を含有する傾向を示している。 2.採取試料に含まれるスメクタイトの結晶格子中の同形置換および層荷電の分布と熱的性質の間には明らかな相関関係が認められた。層間水の脱水温度が層間陽イオンにより変化することは従来から知られているが、層荷電の値と脱水温度の間にも一定の関係があることが明らかになった。 3.スメクタイトの構造水の脱水過程を調べるため、水蒸気圧を制御した状態の下で示差熱分析を行った。スメクタイトの構造水の脱水の温度は三層構造中の同形置換により顕著に変化し、八面体シートの置換量の大きな試料は同形置換量の少ない試料より低い温度で脱水することが判明した。 4.分析電子顕微鏡による組成分析の結果、スメクタイトの層荷電の起源が主に四面体にあるスメクタイトは荷電が八面体に由来する試料と比較して、層荷電の値がより小さくなる傾向を示した。 5.スメクタイトのイオン吸着能は加熱に伴い低下するが、その度合いは試料の組成により異なるのみでなく、水蒸気の分圧によっても大きく異なることが明らかになった。今後この吸着能の変化を続成変質と関連づけてさらに詳細に検討する必要があると思われる。
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