研究概要 |
含ニッケル・ラテライト鉱床の風化過程(ラテライト化作用)は極めて複雑で,多くの要因が組み合されており,同一地域の鉱床においても地下深度別によるプロフアイルでの元素の濃集度や構成鉱物に差異がみられ,普遍的な法則性を見出すことは困難である。 本研究ではおもにフイリピンのPulot,Rio Tuba,Hinatoiuan鉱山の鉱床プロファイルにおける地表からの深度別試料での構成鉱物・化学組成・生成過程などの比較檢討をおこなつている。 1)鉱床プロファイルでは,地表からラテライト層,サプロライト層,基盤岩に区分される。2)ラテライト層とその下位のサプロライト層ではその化学組成,構成鉱物などに大きな差異がみられる。3)ラテライト層はL_1,L_2,L_3 の3つのsub-zoneに区分が可能であるが,ラテライト層の主部はL_3 sub-zoneで占められ,地域によつてL_1,L_3は非常に薄いかまたは存在しない場合もある。4)ラテライトとサプロライト層の境界は明瞭な境をもつ例はまれで,一般に数cm〜数10cmの漸移帶とよぶべき部分が観察される。5)プロファイルの深さにともなう化学組成の変化でラテライト層中のL_1,L_2 sub-zoneでは変化に乏しく,Feの高い値,MgO SiO_2の低い値で特徴づけられるが,L_3および漸移帶ではSiO_2,MgOの急激な上昇,Feの急な減少がみられる。6)サプロライト層は化学組成の面では比較的安定しており,ほゞ一定したSiO_2,Fe,MgOの値を示す。8)深度別のそれぞれの層中でいくつかの微量元素の挙動に変化がみられる。一方ラテライトとその変質母岩との間の微量成分の分布に差異がみとめられず成因的に密接な関係を示す。7)クエン酸ソーダ処理によるラテライト中のNiはNi(OH)_2の形で針鉄鉱に,サプロライト層のNiは含水Mgーけい酸塩鉱物として存在する。8)深度による磨はくpH値で,サプロライト層は(7.2〜9.0),ラテライト層では(5.6〜6.0)を示す。
|