本科学研究費補助金により設置した熱水合成装置を用いて、紅簾石、マンガンパンペリー石(Mn^<2+>)、オホーツク石の安定関係を決定する実験を行う上で 必要な基礎的実験を最初に行った。Ag_<90>Pd_<10>の内部カプセルにCu、Cu_2O、CuO、Fe_2O_3を封入し、それをbufferとともにAgの外部カプセルに封入した。それを、4kbおよび450℃、また、2kbおよび450℃の2通りの条件の下で、3週間の実験を行った。その結果、450℃以上の温度条件では3-4週間の実験で、また、450℃以下の実験では6-10週間の実験で平衡に達すると見なしてよいことがわかった。この結果に基づいて、以下の実験を行った。出発物質はCa_2Al_2MnSi_3O_<12>(OH)、(Ca_<0.8>Sr_<0.2>)_2Al_2MnSi_3O_<12>(OH)、(Ca_<0.6>Sr_<0.4>)_2Al_2MnSi_3O_<12>(OH)の3種類の紅簾石の化学組成の相当する量の特級試薬を混合して作成した。それを、Cu_2O-CuO bufferを用いて2kbの圧力下で、500℃、550℃、600℃の各温度で実験した結果、これらの条件下では、紅簾石が安定であった。4kbで同様のbuffer、温度条件で実験を行った結果、やはり、紅簾石が安定であった。bufferをhematite-magnetiteにして同じ圧力・温度条件で実験を行った結果、ザクロ石が安定であった。紅簾石とパンペリー石-(Mn^<2+>)の関係を明らかにするために、4kb、270℃で10週間の実験を行った。X線粉末回折による同定を行った結果、生成物はパンペリー石と緑泥石からなる可能性が高いことがわかった。本実験の結果から、紅簾石とパンペリー石(Mn2+)、ザクロ石の安定関係に関する手がかりが得られた。以上の研究に加えて、紅簾石に関するメスバウアー分光法による結晶化学的研究を行った。その結果、Ca=Sr置換が6配位席におけるAl、Fe^<3+>、Mn^<3+>の分布に影響を与えていることが明らかになった。本実験的研究に関わる天然の紅簾石を含む変成石の研究についても成果を上げ、岩鉱学会誌に公表した。
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