研究概要 |
我々はポストスピネル転移により下部マントル最上部の条件(24GPa,1600℃)で生成された非常に細粒な(3μm以下)分解生成物が、超塑性的となる可能性を示し、これによって670kmの深さにおける急激な地震活動の減少と、700km以深でのアサイスミシティーなどを説明した。また分解生成物の流動特性を調べるため、アナログ物質としてMn_2TiO_4の分解を用い、0.9-1.6GPa、1000-1320℃の条件で時間を8分から256時間変化させ結晶粒成長実験を行った。長時間おいたものでも粒径は高々10μm程度であり、下部マントルへ沈み込むスラブについても粒成長速度は遅く、5cm/年の沈み込み速度について、少なくとも数十km以上の領域が超塑性的となる事を見積った。更にピストンシリンダー装置を用い、円柱状の試料の上下に圧力媒体より硬いアルミナを、周囲に塩化ナトリウムなどの柔らかいものを詰め、硬いものと柔らかいものの圧縮特性の差を利用してMn_2TiO_4の分解生成物に高圧高温下で変形を加え、変形を加えないものの反射電子像と比較した。その結果、変形を加えたものは分解生成物の一部が非常に細長く延び、超塑性に特徴的なテクスチャーをもつ事が解った。 また、上部マントル物質について高圧高温下で決定されたクリープ法則と地震のQ値のデータに基づき、我々は粘性率とQ値の関係式を求めた。その結果を上部マントルの地震のQ値構造と比較しマントルの粘性率を見積った。東北日本の上部マントルでは火山フロントより背弧側で粘性率は低く(約10^<20>Pa・s)、マントルウェッジの先端部で10^<23>Pa・s程度であり、沈み込むスラブは10^<23>Pa・sより高い。太平洋下ではリソスフェア下部から300kmまでの深さで3x10^<18>-3x10^<22>Pa・sの範囲の粘性率が得られ、リソスフェア・アセノスフェア境界で10^<20>-10^<21>Pa・sの範囲にあり、リソスフェアの粘性は10^<21>Pa・sより高い。アイスランドプラトー下のアセノスフェアでは、Qs=7(0-5Ma)と50(5-10Ma)に対し10^<16>と10^<18>Pa・sが得られた。0-5Maの領域では部分容融(3-7%)が、5-10Maの領域ではソリダス温度の90%くらいの高温が期待され、求められた粘性率はこのような温度構造とも調和的である。
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