研究概要 |
朝熊複合岩体は,御荷鉾緑色岩帯に産する層状貫入岩体である。平成3年度は6日間の野外地質調査を行い,今までの調査結果と合わせ,この岩体を,かんらん岩から主になる下帯(約200m厚),はんれい岩一かんらん岩互層よりなる中帯(約200m厚),はんれい岩より主になる上帯(約40m厚)に分帯した。岩体の全層準を網羅するよう岩石資料を採取し,薄片約250枚を製作し,偏光顕微鏡で観察した。集積鉱物の晶出は,かんらん石+クロマイト,単斜輝石+斜長石,斜方輝石の順でおこっている。イルメナイト,角閃石,黒雲母,アバタイトは,間隙系填鉱物として時々産する。40個の岩石の構成鉱物をEPMAで分析した。かんらん石は,下帯から中帯下部へFo_<89>からFo_<78>へと,単斜輝石は,全層準でCa_<47>Mg_<46>Fe_7からCa_<42>Mg_<45>Fe_<13>へと組成を変化させる。斜方輝石は岩体の最上部で出現し,Ca_2Mg_<47>Fe_<24>の組成をもっている。クロマイトは,岩体の最下部にAl_2O_3に富むもの(Al_2O_3=25wt.%)が産し,層準が上になるにつれてAl_2O_3は減少し,Fe_2O_3とTiO_2が増加していく。斜長石と中帯中部〜上帯のかんらん石は変質している。変質に伴い,イルバ鉱という希な鉱物が生成しているのも発見した。複輝石温度計で,岩体の生成温度を求めた。間隙充填輝石のペア-には950゚〜1110℃,集積輝石のペア-には950〜1050℃と計算された。イルメナイト一単斜輝石を用いると,生成温度は740〜1150℃と計算される。この温度は,間隙充填〜サブ・ソリダス時の温度を示するものと見られる。朝熊複合岩体での鉱物晶出順序は,ハワイのソレアイトのものと一致する。クロマイト中のAl_2O_3含有量もこのことを示している。また,朝熊の単斜輝石やクロマイトは,TiO_2に富み,ハワイのソレアイト(オセアナイト)のものと似ている。従って,朝熊複合岩体の本源マグマは,海洋島ソレアイトと同じ化学組成をもっていたと考えられる。
|