1 嵐山の餌付け群と屋久島の野生群のニホンザル、および西部タンザニアの野生チンパンジーの出産資料を分析した。その結果、餌付けされたニホンザルでは、20歳以上の老齢雌において、最後の子育てを終えてから死ぬまで繁殖しない期間(Post reproductive life span;略してPRLS)が寿命の15%程度を占めていることがあきらかになった。同じようなPRLSは野生群の老齢雌にも認められた。しかしながら、チンパンジーの老齢雌では、PRLSは最大寿命の4〜5%を占めるにとどまった。これらの結果にもとづいて、霊長類におけるPRLSの進化的意義を考察した論文を共同研究者とともに作成、投稿準備中である。 2 チンパンジーとボノボ(ピグミーチンパンジー)という2種の近縁の類人猿を対象に、野生集団での交尾行動を比較した。その結果、従来の報告と異なり、チンパンジーの発情雌の交尾頻度はボノボのそれよりも高いこと、チンパンジーの方がむしろ乱婚性が高いこと、さらにチンパンジーの交尾は雌がイニシアティブをもつ傾向があるが、ボノボでは雄にイニシアティブがあるケースがほとんどであることが示唆された。これらの結果から、高等霊長類での乱婚性を論じる論文を共同研究者とともに作成、投稿準備中である。 3 霊長類のライフ・ヒストリーとヒトのライフ・ヒストリーを比較して、人類社会の進化を論じる上での主要な問題点を分析した論文を作成し、現在印刷中である。 4 霊長類とヒトの性行動と社会構造を考察した論文をまとめ、現在印刷中である。
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