1.前年度に引き続き、屋久島西部海岸に生息する野生ニホンザル個体群について現地調査をおこない、人口学的資料等を収集した。なお、1985年以降観察された群れの分裂や融合、さらに群れ内の個体間の競争などについて共同研究者とともに論文2編にまとめ、現在印刷中である。 2.ニホンザルの社会と、同じく母系的社会構造を示すオマキザルの社会を比較しながら、それぞれの種の雌雄がどんな資源をめぐって、どのように競争しているのかを分析した。この結果は論文にまとめて、現在印刷中である。 3.共同研究者とともに、性周期、配偶行動と子育ての関係、雌の競争などについて、ヒト以外の霊長類の一般的な傾向を論じて、ヒトと霊長類の性行動についての比較研究をまとめた著書を作成し、現在印刷中である。 4.嵐山のニホンザル餌付け群において、生涯繁殖成功が記録されている雌の出産資料を分析した結果、雌を出産した場合、雄を出産した場合よりも次の出産までの間隔が長かった。この結果は、ニホンザルでは娘が子育てのコストが大きいことを示唆するが、これにもとづいてニホンザルの子育てにおけるコストの性差について論文を作成、投稿準備中である。 5.嵐山のニホンザル餌付け群において、1968年から1984年にかけて蓄積された交尾行動の資料にもとづき、配偶関係の通時的変化を分析した。今後さらに、雌雄の成長にともなう配偶関係の変化などを解析して、ニホンザルの生涯繁殖成功についての論文を作成する予定である。
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