(1)非線型伝導の測定・測定システムの改良 (TMTSF)_2PF_6の非線型電気伝導度(伝導度の電場依存性)の測定を行い、200mV/cm程度のしきい電場を持つ非線型電気伝導度を確認した。これに先立ってオーミックな電気伝導度の温度依存性の測定を行なったが、試料にクラックが入るのを防ぎながらSDW状態まで冷却するには100時間程度要することが分かり、経済的に現実的な範囲内でSDW状態で充分な量の実験を行なうためには我々の冷却システムに対して本質的且大規模の変更が必要な事が分かり、新たな冷却システムの設計製作を行なった。さらには、これらの事情から今後SDW状態でのIV測定雑音測定等に要する時間を極力減らす必要を強く感じたため、ランプ電圧発生器とFFTアナライザーを組み合わせた、IV特性並びに雑音測定システムを構築した。 (2)高周波伝導度測定装置の作成 本年度の研究実施計画にあったように、大型排気装置を導入し、昨年度から製作を進めているマイクロ波・ミリ波領域での複素電気伝導度測定装置の改良を行なった。その動作確認は他のグループによる測定結果との比較が部分的に可能な銅酸化物高温超伝導体単結晶で行なった。結果は良好であり、昨年度測定不可能であった表面インピーダンスの虚部(表面リアクタンス)については試料のシグナルの検出に成功し、これより複素電気伝導度の評価に成功した。 研究代表者の所属の異動等もあり、これらに予想外の時間が費やされようやくシステムが完成されつつある現在において本研究費補助金の交付終了の時期を迎えるに至ってしまったが、我々自身に全く経験の無い物質に挑戦した本研究の性格を考えると、本補助金交付による2年間の研究は不可欠のステップであり、来年度からの研究のために貴重なデータを蓄積することができた。
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