研究概要 |
ワイドギャップIIーVI族半導体超格子CdZnS/ZnSはフレ-リッヒ係数が大きいので、励起子とLOフォノンとの相互作用係数(Г_<LO>)が大きく、室温励起子の発光を得ようとすると、励起子の結合エネルギ-がГ_<LO>より大きくなければいけない。実際、Cd_xZn_<1-x>S(x=0.3)では、励起子の結合エネルギ-がCd_xZn_<1-x>Se(x=0.2)のそれの約4倍ある。励起子の生成と消滅過程を知るために、2KにおけるCdZnS/ZnSSLS(77Aの井戸幅)の1S励起子ピ-ク(3.26eV)の励起スペクトルを測定した。ルミネッセンスの検出エネルギ-は、それぞれ、3.36eV,3.35eV,3.34eV,3.29eVとした。励起スペクトルに振動構造が観測され、その間隔は約42meVである。少なくとも、6次の振動ピ-クまで観測された。また、それぞれのピ-クの高エネルギ-側に、約7meV離れた振動構造も見られる。しかしながら、この振動は77Kになると消える。このような振動構造は、22と41Aの井戸幅を持つものでも見出された。これらの振動構造は、LOフォノンによる励起子の緩和過程に対応していると思われる。CdZnSバルクのLOフォノンのエネルギ-は約43meVあり、m_e^*/m_h^*<0.1を考慮すると、E=nhω_<LO>(n:1,2,3・・・)の関係から、E=43meVとなり、実験から得られたものと良く合っている。検出エネルギ-が減ると、LOフォノンによる構造は見られなくなり、3.29eVの励起エネルギ-では弱い1LOフォノンの放出のみであり、後は、自由坦体の吸収に対応した幅広い発光帯になっている。すなわち、自由励起子が生成されてから、LOフォノンを放出して緩和し、エネルギ-の低い状態のところに局在化してくるものと考えられる。
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