研究概要 |
本研究では結晶内の欠陥によって誘起された低波数域のラマン散乱スペクトルを観測し,欠陥を評価することを目的とした。このためシングルまたはダブルモノクロメータとマルチチャンネル検出器の組み合わせをベースとして選び,200cm^<-1>以下のラマンスペクトルが測定できる分光システムについて検討した。さらに積層欠陥を含むsilicon carbideで低波数域の測定を試み,二つのシステムについて比較検討を行った。さらに測定結果の解析を行い積層欠陥の評価を行った。本研究では先ず分光システムとして (1)零分散のフィルター分光器(f=25cm)とシングル分光器を結合させたトリプル分光器及びマルチチャンネル検出器を組み合わせた構成, (2)ホログラフィックフィルターとダブル(またはシングル)分光器及びマルチチャンネル検出器の組み合わせた構成, について検討した。(1)のシステムの利点は任意の励起レーザー波長に対して使用できるが,フィルター分光器に多数のミラーと2枚の回折格子を用いるため光の損失が大きくて信号強度が非常に弱くなり,低波域の測定が困難であった。(2)のシステムについてはフィルターの損失が僅か20%で,かなり明るい分光システムであることが分かった。フィルターとシングル分光器の組み合わせでは測定可能波数の下限150cm^<-1>,ダブル分光器との組み合わせでは100cm^<-1>程度であった。さらにマルチチャンネル検出器の前に非対称スリットを設け,レーリー光を除去することを試みた。この結果下限が30〜40cm^<-1>下がり,測定領域のバックグランドを減少させる事ができた。このシステムを用いて積層欠陥を含むSiCの低波数域(100〜265cm^<-1>)のラマンスペクトルを測定し,その解析を行った。
|