研究概要 |
この研究課題で,我々は金属表面のアルカリ金属原子の吸着機構が被覆度の変化に応じてどのように変化するのかという問題を理論的に解明することを目的にしている.LCAOモデルを用いるが,通常無視される原子軌道間の非直交性や吸着位置の不規則性を考慮し現実の現象の特徴を表現できる枠組みとしている.昨年度までに,吸着原子間の有効相互作用の被覆度による変化を自己無撞着に求める計算を完了し従来の定説と異なる高被覆度における引力相互作用の可能性を理論的に示した.これは既に実験的に知られていた高被覆度における吸着原子の凝縮現象を裏付ける結果である.(業績1) 今年度は、当初の計画にはなかったものであるが,従来確立してきたモデルと方法を,2層吸着の問題に適用することを試みた.2層吸着の問題とはアルカリ原子を1層吸着させた上に別種のアルカリ原子を各被覆度で吸着させた系の性質を問題にするものである.この研究により,アルカリ原子吸着の機構がより一層明確に理解できることが期待される.この問題については,最近,北大の研究グループが実験を始めており,新しい触媒機構を示唆するなど興味深い結果が得られている.当研究では,アルカリ2/アルカリ1/金属 及び アルカリ1/アルカリ2/金属の一対の系について電子遷移,有効相互作用及び仕事関係の被覆度依存性をコンシステントなパラメータを用いて計算し実験事実との比較を行うこととした.今年度において定式化を完了させ第1段階として,アルカリ2/アルカリ金属1及びアルカリ1/アルカリ金属2の系について予備的な計算を行い,いくつかの点で実験結果と対応する結果を得ている.この結果を検討し,近く報告する予定である.
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