研究概要 |
当研究課題では,平成3年度に続いてW(011),Ta(011),Mo(011)及びNb(011)上に結晶構造の異なるPdを,10^<-8>Pa下で真空蒸着し,Pd単原子層からPd固有の成長層が形成される迄の原子配列構造の遷移過程とその挙動について一原子分解能電界イオン顕微鏡(FIM)により,最表面層から下地界面に至るまで順次電界脱離させ,その都度一原子層ごとの原子配列構造が調べられた。 1.下地界面にあるPd単原子層の原子配列構造は,下地の配列構造と全く同じ疑似形態層を形成している。その脱離電界強度は,下地原子の蒸発電界強度に強く依存し,Pd固有の蒸発電界強度(F_<des>=34V/nm)よりも遥かに高い(F_<des>(Pd/W)=52V/nm,F_<des>(Pd/Ta)=46V/nm,F_<des>(Pd/Mo)=44V/nm,F_<des>(Pd/Nb)=39V/nm)。 2.W(011),Ta(011),Mo(011)表面上に20〜30のPd原子層を蒸着させた場合に,Pd[111]方位の明瞭な結晶面が成長することが確認された。これらのPd成長層を電界脱離法で下地界面まで各原子層の配列構造の移行過程についてFIM観察された。最表面層のPd固有の成長層と,下地界面の1〜2原子層のPd疑似形態層は明瞭に分解される。また,これらの両原子層は連続的には移行せず,両原子配列相の中間層には数原子層のbuffer layerが存在する。しかし,この中間層(buffer layer)では,規則性の在る明瞭な原子配列構造は分析できない。これらの中間層を,更に定量的に分析するめには,試料の極低温化等の装置の工夫が必要であろう。 3.W(011),Mo(011)表面上に極微少量のPdを極底温で蒸着され(011)表面上での微小Pd単原子層同志の熱拡散効果の挙動について分析された。(011)面上のPd単原子層同志が加熱により一つの大きなPdを生成した後,ある臨界温度で,Pd単原子層は個々に分解されず一つの単原子層のまま(011)表面から消滅する。
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