研究課題/領域番号 |
03650027
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研究機関 | 岡崎国立共同研究機構 |
研究代表者 |
三谷 忠興 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助教授 (50010939)
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研究分担者 |
北川 宏 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (90234244)
岡本 博 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (40201991)
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キーワード | 光電導 / DTPP / 複写感光材料 / 電荷移動錯体 / 水素結合 |
研究概要 |
最近の新しい複写感光材料である有機電荷移動錯体(DTPP)を研究対象として取り上げ、その応用面での新しい可能性を探る研究を遂行している。本年度は、まず、この物質のもつ高い光応答感度の要因を解明するために、試料作成と平行してその物性測定を行い、次のような有意義な研究成果を得ることができた。 i)基礎物性測定に不可欠な良質の単結晶作成に成功した。また、応用上欠かせない薄膜についても蒸着法による膜作成を試み、単結晶の光学スペクトルと比較しうる程度の膜を製作することができた。 ii)DTPP単結晶について偏光反射スペクトルを測定し、結晶構造解析の結果と対比させることにより、分子内および分子間電荷移動の形態を明らかにすることができた。 iii)単結晶および薄膜の光伝導励起励起スペクトルを測定し、それらを上記の反射スペクトルと比較することによって、光伝導と電荷移動形態との関連を明らかにした。また、これらのスペクトルには、反射スペクトルでは見いだされなかった構造が検出され、これがこの物質の高効率光伝導の起源であることが判明した。 iv)光電流の電場依存性は非線形性の強いものであったが、水素結合に垂直な方向では、線形になることが見いだされた。これは水素結合が光伝導に重要な役割を演じていることを示している。この機構を説明するために、プロトン変位による電荷移動励起子の自動イオン化モデルを提唱した。 以上の結晶構造解析と物性測定の結果を総合的に判断すれば、DTPP結晶はこれまでの錯体にはない特異な電導機構を有していることが判明し、次年度以降の研究の発展とその応用が大いに期待される。
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