薄膜レ-ザ-の開発は光源の小型化を計るばかりでなく、広い波長領域でのレ-ザ-発振が可能であるため、光通信、光情報処理等のキ-テクノロジ-となるであろう。本研究にて、スパッタリング装置を用いて、遷移金属イオンを含むガ-ネット結晶薄膜を作成した。薄膜レ-ザ-の性能評価を示す光変換効率の測定を作成された結晶薄膜に応用した。特に、遷移金属イオンからの蛍光スペクトルの諸特性を、測定温度を低温から室温まで変化させて、測定した。また、その光変換効率を改善するために、蛍光の量子効率を理論的に計算し、実験値と比較検討した。以下では本研究から得られた結果をまとめる。 (1)Cr^<3+>を含む結晶薄膜はスパッタリング条件を変えることにより、薄膜の組成変化が生じ、Cr^<3+>が環境の異なるサイトに置換され、蛍光スペクトルに不均一な幅を与える。その結果、可変波長レ-ザ-の発振波長領域を広げる効果を与えることを示した。 (2)ガ-ネット結晶中のCr^<3+>の蛍光量子効率の計算を、Cr^<3+>を取り囲んでいる母体の格子振動を考慮に入れて、行った。強結晶場及び中間結晶場中のCr^<3+>の蛍光量子効率は室温にてほぼ理想値の1に近いことを明らかにした。 (3)遷移金属イオンTi^<3+>を含む酸化物結晶YAlO_3のレ-ザ-活性イオンのエネルギ-状態を電子スピン共鳴と吸収スペクトルの偏光特性から推定した。YAlO_3は斜方対称をもち、Ti^<3+>は低い対称性の結晶場のサイトに置換されるので、電気双極子モ-メントが誘起される。このことにより、蛍光量子効率が高くなり、理想値1に近づくことを明らかにした。
|