顕微蛍光測法によるヒト歯牙の分光特性の調査と、歯牙診断への応用を目的としている。そのための専用測光機器の試作が本年度の課題であった。はじめに、現有のニコンYFーEFD蛍光顕微鏡を、時間分解測光可能な装置に改造した。改造内容は、(1)定常光源以外にパルス光源も取付けることができる機構とした。(2)専用の光輝度ナノ秒パルス光源を試作した。(3)蛍光異方度が測定できる光学系を組み込んだ。(4)連続波長可変フィルタ-を受光部に取付け、蛍光分光測定ができるようにした。(5)コンピュ-タ-で機器の制御とデ-タ-収集を行なえるようにした。(6)高速微弱信号に対するノイズ対策をほどこし、SN比を向上させた。(7)歯牙以外の通常の顕微蛍光試料に対しても、時間分解測光が行なえる機器となった。 また、本試作機によって、ヒト歯牙および各種の義歯材料の蛍光持性を測定した。その結果、次のことが分かった。(1)自然光のもとでは歯牙と同色に見える義歯材料も蛍光スペクトルにはそれぞれ個性がある。(2)時間分解蛍光減衰波形もそれぞれが異なる。(3)反対に、正常なヒトの歯牙の蛍光スペクトルは不変である。(4)したがって、蛍光特性を見れば、材料の素性(会社名、製品名など)の鑑定に応用できそうである。 このように機器製作に関して、計画書に記載されたとうりの成果を得ることができた。
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