顕微蛍光測法によるヒト歯牙の分光特性の調査と、歯牙診断への応用を目的としている。そのための専用測光機器の試作第一の課題であった。そこで現有のニコンYF-EFD蛍光顕微鏡を、時間分解測光可能な装置に改造した。具体的には(1)専用の光輝度ナノ秒パルス光源を試作した。(2)蛍光異方度が測定できる光学系を組み込んだ。(3)コンピュータで機器の制御とデーター収集を行なえるようにした。 最終年度はさらに、微弱蛍光画像のテレビ撮影を試み、画像をコンピューターメモリに収納した後、スペクトル分離処理等を施した。また各種歯牙の蛍光測定を行い齲蝕過程の調査を試みた。ヒト歯牙および各種の義歯材料の蛍光特性を測定した。その結果、次のことが分かった。(1)自然光のもとでは歯牙と同色に見える義歯材料も蛍光スペクトルにはそれぞれ個性がある。時間分解蛍光減衰波形もそれぞれが異なる。反対に、正常なヒトの歯牙の蛍光スペクトルは不変である。したがって、蛍光特性を見れば、材料の素性(会社名、製品名など)の鑑定に応用できそうである。(2)齲蝕部分の蛍光スペクトルが正常部に比べて長波長側に移動する。時間分解蛍光減衰波形も齲蝕により、短時間減衰へと変化する。これらから齲蝕の過程が追跡できる。(3)歯牙象牙質の蛍光減衰時間は年令が増すほど高速化する。また同一歯牙であっても部位により蛍光減衰波形が異なる。したがって老化が歯牙均一に起こるのではなく、特定部位から進行することがわかった。 以上の結果を別記論文発表した。
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