研究概要 |
本研究では,特に疾患の頻度が高い腰部椎間板に焦点を当て,その力学的な機能を解明し,機能を代行する人工構造物を開発するための設計指針を明らかにすることにある。当該年度では,以下の項目を実施した。 1.屍体標本による腰部椎間板の力学的基礎実験:屍体腰部椎間板を用いて,引張・圧縮およびねじり繰返し負荷試験を行い,椎間板の持つ基本的な力学的特性を調査した。その結果,椎間板の引張,圧縮,ねじり負荷時の各剛性値は,変形量の増加にともない指数関数的に増大することを確認した。さらに,これら剛性曲線に及ぼす椎間板の各要素の構造効果を確認した。 2.生体内椎間板に生じるひずみの椎定:健常な脊柱が運動するとき,各部位の椎間板に生じるひずみ状態を確認することは,機能代行人工構造物を開発する上で重要な情報となる。そのため,生体内椎間板のひずみ,変位測定法を検討した。脊柱の動態は前後屈運動が支配的なことから,側面レントゲン影像からひずみを算出する手法を考案した。このことより,各部位の椎間板において,前屈時,後屈時に生じる特徴的なひずみ分布が得られた。 3.計算機による椎間板構造機能の実験シミュレ-ション:上記の実験結果を踏まえて,それぞれの負荷様式による特性が複合構造体である椎間板のどの構成要素によるかを構造工学的,材料工学的に明らかにするため,計算機シミュレ-ション手法の検討を行った。椎間板を構成する各組織の材料特性の確認だけでは,構造体としての力学的特性を把握できない。そのため,三次元有限要素法を用いて,非線形弾性挙動や材料異方性を付加し,生体構造物の解析手法を検討した。本項は,継続中である。
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