圧電材料破壊強度評価のための電気破壊力学に関する基礎的研究を行い、圧電アクチュエータ、超音波モータ、弾性表面波デバイス等の新しい圧電応用に関する材料設計・開発・評価に資する結果を得た。得られた成果を要約すると以下の通りである。 1.縦せん断下における帯板縁に垂直なき裂を有する圧電セラミックス帯板(6mm系材料)の電気弾性相互干渉問題を考え、電気破壊力学的検討を加えた。分極方向は、帯板縁に垂直な場合を考えた。解は、フーリエ変換法により電気弾性場に関する双積分方程式に導き、さらに第2種フレドホルム型積分方程式に帰着して求めた。また、数値計算を行い、応力拡大係数およびエネルギー解放率に注目して結果をグラフに示し、詳細な検討を加えた。数値例として、PZT-5Hを考えた。 2.き裂を有する圧電セラミックスの縦せん断波散乱問題を取り上げ、理論的に解明した。解は、積分変換と積分方程式を用いて求めた。また、圧電効果を考慮したエネルギー解放率を動的問題に拡張し、積分径路に独立な表示式すなわちJ積分に帰着し、電気破壊動力学的検討を加えた。さらに、動的応力拡大係数および動的エネルギー解放率の数値計算を行い、結果をグラフに示し明らかにした。 3.電気破壊力学の数理解析法開発のための基礎的電気弾性問題を理論解析した。 4.知的材料開発のため、古典積層理論を拡張し、機械的・熱的・電気的負荷を受ける圧電積層板(グラファイト/エポキシ繊維強化複合板と高分子系圧電膜PVDF)の電気熱弾性挙動を理論解析した。また、熱ひずみの制御可能性および電気熱弾性破壊挙動についても基礎的検討を加えた。
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