圧電効果は電気機械デバイスにおいて広く利用されており、PZT系(ジルコンチタン酸鉛)などの圧電セラミックスがアクチュエータ用材料として注目されている。これら圧電セラミックスの寿命の正確な予測を行うためには、これらの材料の電気破壊力学解析を行い、破壊過程を理解することが必要である。また、線形弾性破壊力学の応力拡大係数アプローチは、脆性材料の不安定破壊を予知する際に有益な成果を修めてきている。圧電材料が電気力学的負荷を受ける場合にも同じアプローチの適用が期待されるが、電気弾性相互干渉を考慮する必要があるなど問題はさらに複雑である。本研究では、き裂を有する圧電材料に注目し、電気弾性解析を行って、詳細な検討を加えた。得られた成果を要約すると以下の通りである。 1.圧電セラミックス平板の電気弾性解析 六方晶系(6mm)の圧電セラミックスに対する電気弾性論を用い、異方性板の理論を圧電セラミックスの電気弾性板理論に拡張し、2、3の基本的問題を例に、電気弾性相互干渉を解明した。 2.縦せん断下における圧電セラミックス帯板の電気弾性破壊力学解析 縦せん断下における帯板縁に平行なき裂を有する圧電セラミックス帯板(6mm)の電気弾性問題を理論解析した。数値計算を行い、応力拡大係数およびエネルギー解放率に注目して結果をグラフに示し、詳細な検討を加えた。また、帯板縁に垂直なき裂の場合についても同様に電気弾性解析を行い、考察を加えた。 3.き裂を有する圧電セラミックスの動的縦せん断 き裂を有する圧電セラミックスの縦せん断波散乱問題を取り上げ、理論的に解明した。また、圧電効果を考慮したエネルギー解放率を動的問題に拡張し、積分径路に独立なJ積分に帰着し、電気破壊動力学的検討を加えた。
|