研究概要 |
原子炉,圧力容器及び配管系においては,高圧とともに熱負荷が加わり、部材内部や表面に欠陥が存在すると非常に大きな応力集中を生じ,しばしば破壊の原因となっている。これらの欠陥による応力集中を明らかにするために,円形き裂,あるいは楕円体状欠陥を表面近傍にもつ厚板,半無限体の熱応力問題を解析した。得られた結果は以下の通りである。(1)厚板材に回転楕円体状空かあるいは円形き裂が存在し,上表面の一定領域が加熱,下表面の一定領域が冷却される問題を解析した。最大引張応力は,特別の場合を除き空か面上の厚板表面に最も近い点あるいは厚板表面に生ずる。応力分布に対する形状比の影響は楕円体が偏長化している場合から球形に近づくにつれ最大圧縮応力は大きくなるが,球状が偏平化し始めると最大圧縮応力は一旦減少し,更に偏平化すると再び増加する。また加熱域が大きくなるほど最大圧縮応力は大きくなるが,加熱域が欠陥の長さ以上の大きさになると最大圧縮応力は減少する。(2)半無限体内に回転楕円体介在物あるいは円形き裂が存在し,介在物に一定のeigen歪(熱歪)を与えた場合を解析した。この問題は短繊維強化の複合材料の熱応力の問題でもある。最大引張応力は介在物ー母材境界面の自由平面に最も近い母材側の点に生じる。この最大応力は介在物の大きさが大きくなるにつれ,増大する。すべりを許した場合,完全接着の場合よりも最大引張応力は大きく,この応力集中により介在物境界面に沿って剥離が生じる傾向にある。(3)eigen歪を与えた楕円介在物を有する半無限板を解析した。さらに境界要素法により,円形介在物にすべりを許した場合および摩擦を与えた場合を解析し摩擦の影響はすべりを許した場合に比べそれほど影響しないことを明らかにした。(4)光弾性実験では楕円体状空かをもつ厚板の実験を行い良好な結果を得た。
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