1.超音波横波のスペクトラム測定は、偏り方向と横波音速差の検出に最適と考えられる。この方法によって偏り方向を十分な精度で検出すれば、せん断応力の非破壊測定とせん断応力積分法の適用によって、非破壊残留応力測定が可能になる。本研究はこのような超音波スペクトラム解析法を実用化するための基礎的研究である。 2.前年度(初年度)にV字切欠き試料の応力分布を対象にして詳細な検討を行い、新しい知見である位相スペクトラムの有効性を含む良好な結果を得た。最終年度である本年度は、V字切欠き試料と焼きばめ試料を用いて、スペクトラム測定を継続し次の結果を得た。 (1)前年度に明らかにされた偏り方向の非直交性について検討し、測定される2方向の平均方向を用いることにより良好な応力解析結果が得られることを確かめた。 (2)V字切欠き試料においても良好な応力解析結果が得られ、超音波スペクトラム解析法の信頼性が確認された。 (3)V字切欠き試料では、曲げ応力領域を利用して実用的な非破壊残留応力測定が可能なことを示した。特にこの場合には音弾性定数も同時に測定される。 (4)焼きばめによる残留応力に関して、せん断応力成分が非破壊的に測定されることを確かめ、更に応力分布の対称性を利用する主応力差の非破壊測定も有効であることを示した。 (5)前年度と本年度の結果を整理し、超音波スペクトラム解析法の実用化をはかる上で有用な成果報告をまとめた。
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