薄膜の厚さ測定に音響信号を利用する新しい方法の研究

1992 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 03650098
• 研究機関: 新潟大学
• 研究代表者: 一宮 亮一 新潟大学, 工学部, 教授 (10035595)
• 研究分担者: 加賀 利廣 新潟大学, 工学部, 助教授 (20018477)
• キーワード: 薄膜 / 測定 / 厚さ / 周波数 / 音響 / 共鳴

研究概要

剛壁によって囲まれた厚さ一定の空気層の上部に薄膜を置き、薄膜の上部に設置した音源であるスピーカから音響を発生させる。空気層の厚さと薄膜の厚さによって決まる周波数の共鳴が空気層内に発生し、その共鳴音をマイクロホンおよびアンプを通してFFTへ送り共鳴周波数を記録させる。空気層厚さを一定にしておくと薄膜の厚さによって周波数は変化する。このような原理を利用して薄膜の厚さ測定の新しい方法を考察した。実験装置を試作し、種々の厚さのポリエチレン膜について膜の上方に装置した平面スピーカより平面波を送波した。空気層下部に設置したマイクロホンにより共鳴音を測定した。塩化ビニール膜についても同様に膜の厚さ測定の実験を行った。これらの実験を通して次の結論が得られた。
(1)共鳴音の周波数と膜の厚さとの間には良い対応が見られ、薄膜の厚さを音響の周波数を用いて測定できることが明らかになった。
(2)共鳴周波数は、スピーカと膜との間の距離、空気層厚さ、膜の厚さ(膜の面密度)が小さくなるほど上昇することが明らかになった。
(3)薄膜の厚さの変化に伴う共鳴周波数の変化量は、スピーカ高さと空気層厚さが共に比較的小さい場合のほうが大きくなることが明らかになった。
(4)空気層厚さ、スピーカ高さを共に小さくすると膜の厚さと共鳴周波数の関係は次第に曲線状になり、いずれか一方を大きくしていくと直線状に変化する傾向を示した。

研究成果

• [文献書誌] 一宮 亮一: "音響インテンシティ法を利用した隙間の音響特性に関する研究" 日本機械学会論文集C編 536号. 57. 334-338 (1991)
• [文献書誌] 一宮 亮一: "音響信号を利用した管の長さ測定(管内空気柱の共振周波数検出)" 日本機械学会論文集C編 539号. 57. 2217-2222 (1991)
• [文献書誌] 一宮 亮一: "音響信号を利用した体積測定の研究(スピーカ音源と音響周波数による体積の測定)" 日本機械学会論文集C編 541号. 57. 2888-2893 (1991)
• [文献書誌] 柳本 憲作: "円板状工具から放射される風切音に関する研究(風切音の及ぼすスリットの傾き角の影響)" 日本機械学会論文集C編 547号. 58. 945-950 (1992)
• [文献書誌] Shuichi SAKAMOTO: "A New Method of Measuring Displacement by means of Variation of Sound Frequency and the Length of Air Column in a Small Pipe.(A Resonant Method using Speaker and Electric Feedback Loop)" JSME International Journal,Series III No.1. 35. 9-13 (1992)
• [文献書誌] 山田 正直: "音響信号を利用した円筒軸計の計測(反響による位相遅れ量の拡大)" 日本機械学会論文集C編 553号. 58. 2680-2685 (1992)
• [文献書誌] 山田 正直: "音響信号を利用した円筒軸計の計測(平面波の位相遅れによる計測)" 日本機械学会論文集C編 554号. 58. 3024-3028 (1992)
• [文献書誌] 坂本 秀一: "管内空気柱の音響周波数変化を利用した変位の精密測定(電気音響式非接触変位センサ)" 日本機械学会論文集C編 555号. 58. 3259-3264 (1992)
• [文献書誌] 鈴木 祐治: "水中における音響信号を利用した変位の精密測定(音響周波数と変位の関係)" 日本機械学会論文集C編 558号. 59. 587-592 (1993)
• [文献書誌] 坂本 秀一: "音響を利用したシートの枚数検出法" 日本機械学会論文集C編 559号. 59. 819-826 (1993)
• [文献書誌] 一宮 亮一: "機械系の音響工学" コロナ社, 188 (1992)