研究概要 |
ダイヤモンド砥石を用いてファインセラミックスを研削加工する場合,加工表面近傍には数々の機械的および熱的要因による加工変質層が生成される。本研究では,それら加工変質層の生成機構を解明するため,研削加工における1個の砥粒切れ刃の切削現象に着目し,サイアロンの円弧形切削実験を行い,切削抵抗,接触圧力および加工表面下に生成されるクラックについて解析を行った。さらに、窒化ケイ素の円筒プランジ研削実験によって極表面の構造の変化などの解析を行った。得られた主な結果は以下のようである. (1)サイアロンを過渡的切削する場合の寸法生成量,接触圧力,背分力およびクラック深さの変化過程は,切れ刃の干渉深さによって支配され,最大干渉深さにはほとんど影響されない。 (2)サイアロンを過渡的切削する場合の切れ刃に作用する平均接触圧力は,弾性接触領域では弾性限界接触圧力まで僅かに増加し,塑性変形領域になると干渉深さの増加に従って塑性限界接触圧力まで急激に増加する。さらに切削領域では,ほぼ塑性限界接触圧力で一定となる。 (3)過渡的切削過程における接触圧力,背分力および切れ刃の干渉形状などを考慮し,静的干渉における背分力とクラック深さとの理論的関係を導入することで,クラック深さを理論的実験的に予測することが可能である。塑性変形領域では背分力の増加に対し双曲線的にクラック深さは増加し,切削領域では直線的に増加するが,切れ刃の干渉形状によってその勾配は異なる。 (4)窒化ケイ素を研削加工することによって,その極表面にはケイ素と酸素が化学的に結合したシリカが生成されることが確認された.
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