研究概要 |
本研究は,市場のニーズの変化に適切に対応するために,フレキシブル生産における設計や生産に関わる意思決定の構造を分析し,CIM(コンピュータ統合生産)に適合する分散協調型の意思決定支援システムの概念と具体的方法を提案するものである。本研究で得られた成果は次のようである。 1.分散型意思決定の基盤であるコンカレント・エンジニアリングのための組織の構成について基本的な考え方を示した。すなわち,生産意思決定において処理すべき作業群を適切な作業グループに分割し,各作業グループに対応した作業者グループを構成する考え方と方法を提案した。 2.設計段階における設計作業/モデリング作業と,他の作業モジュールを統合して,並行処理するための情報構造と意思決定機構について,基本的な考え方を示し,オブジェクト指向に基づく意思決定支援システムのプロトタイプを作成した。 3.フレキシブル生産における生産意思決定モジュールの分析を行い,それらの相互関係を明らかにするとともに,代表的なモジュールとして,生産設備計画,生産ライン構成および工具配分問題を取り上げ,意思決定手順の分析とそのプロトタイプの作成を行った。 以上の研究成果により,フレキシブルな生産環境における意思決定の基本的な考え方とその支援システムの基本構造が明らかになった。コンカレント・エンジニアリングは今後の重要な技術として発展が期待されているが,本研究はその実現のために重要な一つの基盤技術であると考えられる。実用システムの開発のためには,なお大規模な研究の展開が必要であると思われる。とくに,現場技術者を交えたフィールドワークに基づくモジュール群の整備,実際にモジュール群を統合する際に生じる問題点の抽出とその解決法の確立が望まれる。
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