研究概要 |
研削加工表面層が母材の性質と異なる要因となる残留亀裂、残留応力の生成機構について解析と実験により追究した。 1.研削時に砥粒が脆性材料の工作物に作用した時の先在亀裂の進展条件と発生する残留応力を追究する第一歩として、ここではまず球圧子の材料への押込み時およびその除荷時の応力と亀裂進展条件を解析した。 圧子の材料への弾塑性押込み時に、材料内部に発生する応力状態は有限要素法によって解析し、亀裂進展条件は求められた応力を用いて破壊力学によって解析した。この結果、圧子の半径が臨界値より小さい場合には、亀裂(コーン亀裂,メデイアン亀裂)を進展させることなく、材料内部に塑性変形を生じさせながら圧子を押し込むことができる押込み深さが存在することが分かった。 また、除荷後の残留応力の解析も合わせて行った。その結果、圧子直下部分では圧縮の残留応力が発生し、それよりさらに下の部分および接触縁外側の部分で引張りの残留応力が発生することが明らかになった。またこれらの引張りの残留応力の作用する方向からラテラル亀裂、ラデイアル亀裂が進展する可能性があることが示された。 2.実際の研削においては、多くの砥粒の作用によって加工面が生成されるので、個々の砥粒の作用による干渉効果を考慮しなければならない。このため、圧痕周りの残留応力場を球殻の弾塑性押広げ解から求められるものを重ね合わせて、残留応力が圧痕間隔によっていかに変化するかを推定し、さらに実験によってこの変化を求めた。その結果、圧痕間隔の減少によって、表面層の圧縮の残留応力が大きくなること、またその程度は材料の硬さ、弾性率などによって変わることなどが明らかになった。
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