機械研磨で仕上げたダイヤモンドナイフは、1keVアルゴンガスイオンをこの切刃の上方より照射することにより更に鋭くできることを以前に示したが、このイオンビーム加工の際に生じた薄い損傷層の厚みやそれがダイヤモンドナイフの切削性能に及ぼす影響については検討していない。そこで、AFM(原子間力顕微鏡、理大理学部に設置済み)を用いてイオンビーム加工したダイヤモンド試料の表面を原子のオーダーで観察し、イオンビーム加工条件と加工試料の結晶性に関して詳細に検討し、最適なイオンビーム加工条件を求めることを本研究の目的とした。また、ナイフの切刃先端半径の測定は非常に因難であるので、三角錐および四角錐型半導体ダイヤモンド探針のイオンビーム加工を行い、STMによりこれらの先端半径を予測することも目的の一つとした。このほか、機械研磨で仕上げたダイヤモンドナイフのリアクティブイオンビーム加工について検討するためにダイヤモンド薄板を酸素イオンビームで加工し、ダイヤモンドの加工速度のイオン入射角依存性や結晶面依存性あるいは加工したダイヤモンドの表面性状などを検討することも本研究の目的とした。 以上の検討の結果次の結論と成果を得た。 (1)機械研磨で前仕上げした三角錐型ダイヤモンドは真上よりArイオンビムを当てることにより必ず先端を鋭くできる。しかし、その先端半径の予測は因難である。 (2)イオンビーム加工およびリアクティブイオンビーム加工したダイヤモンド単結晶の表面性状は、前加工面それが結晶面ごとに異なるために、結晶面により異なる。また、機械研磨により生じた欠陥部分はより速く加工される。 (3)酸素イオンビームを用いたダイヤモンドの加工速度はArイオンを用いたそれに比べて3倍ほど速い、減者の場合のダイヤモンドの加工速度のイオン入射角依存性はイオン入射角の増加とともに除々に減少する。
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