研究概要 |
実験に必要な摩擦試験機およびその周辺機器に関してはほぼ当初の予定通りにシステム化できており,研究の進展状況もこれまでのところ順調である。現在、実験は複合体ならびにそれを構成している素材の摩擦摩耗特性の把握に重点を置いている。それによると,本研究で使用しているセラミクスおよび金属は実験環境,特に湿度に対して摩耗率が著しく変化することが明かとなった。さらに,セラミクスと金属をある割合で組み合わせて複合体を製作した場合,その摩耗率がいずれの素材の摩耗率より小さくなり,複合化による摩耗低減効果が存在することも確認された。これら各材料の摩耗率の湿度依存性,および,複合化による摩耗低減効果は,摩擦面における化学反応であるトライボケミカル反応と密接に関係している。また,本研究で使用している複合体の摩耗率はおおよそinverse rule(複合体の摩耗率の逆数が,素材の摩耗率の逆数の和に等しいという関係)に従うこと,ならびに,セラミクスについては摩耗のモ-ドが変化する臨界摩擦荷重および臨界摩擦速度が存在することが明かになった。 今後の研究の展開としては,平成3年度に引き続き,複合体の摩擦摩耗特性,および,SEMやXPSによる微視的で化学量論的な観察・分析を行い,基礎デ-タとして蓄績,充実させる予定である。さらに,これらの基礎デ-タに加え,摩擦面内部の応力場の計算など理論的なアプロ-チを展開することにより,複合体の摩耗のメカニズムを定量的に解明し、より厳密なセラミクス・金属複合体の摩擦摩耗特性に関する複合法則を構築する。
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