研究概要 |
(1) 手が対象物を静的及び動的に把持するためのハンド機構の自由度,接触点数等の数の条件を導出してのち,静的把持を保ちながら手の中で対象物の位置・姿勢を変える静的繰り動作及び途中に動的把持を含む動物繰り動作について,指の本数と実現可能動作の関係を明らかにすると共に,動作実現の為の協調制御のアルゴリズムを示した.実際に各指2自由度の2本指平面バンドを試作し,直進及び回転の静的並びに動的繰りの実験を行い,アルゴリズムの妥当性を確認した. (2) 人間の歩行における最適化の意味を力学的な立場から解明するために,下肢7リンクモデルを用い,関節出力動力及び身体の力学的エネルギー変動によって力学的に消費エネルギーを求め,歩行速度及び歩行率をパラメータとして,酸素消費から求めた生理学的エネルギーと比較した.その結果,生理学的消費エネルギーと力学的消費エネルギーは低・中速歩行ではほぼ一致するのが高速になると前者が大きくなること,又歩行のパターンには個人差があるものの,消費エネルギーは自然歩行の歩幅のときに最も小さくなることが明らかになった. (3) 歩行中の筋において消費されるエネルギーを的確に把握するために,従来から知られている短縮性及び静止性収縮におけるFennの効果に検討を加え,EMGポテンシャルの実験により,伸展性収縮の適用拡大をはかった.このような筋肉の特性を考慮して生体力学的に求めた歩行時の消費エネルギーは,(2)の力学的消費エネルギーに比べて,酸素消費による生理学的エネルギーに近く,生体の特徴を反映していることが分った. (4)人体の表面筋電位は筋の活動状態を知る有力な信号であるが条件による変化が大きく,動作認識に用いることは困難とされてきた.そこで脚大腿部の筋電位を周波数解析してオクターブ分析したのち,ファジィ理論を適用して波形の大きさと形状の適合度を求め,屈曲・伸展の動作及び負荷の違いの認識を行った.
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