研究概要 |
表面流動特性の影響を受け易い外輪回転形磁性流体シ-ルを対象に,解析および実験の両面から研究を進めた.解析的な検討としては,磁石幅・ヨ-ク厚さ・ヨ-ク長さをパラメ-タとして,ヨ-ク表面上の磁性流体に働く磁力の方向・大きさを磁場解析により求めた.ヨ-ク表面の磁性流体の形状としては,表面張力が支配的な場合として層状(フイルム)形状を,また磁力が支配的な場合として突起(スパイク)形状とを選定して計算を行い,ヨ-ク表面上において磁性流体に働く磁力の方向が,外向きと内向きに切り変わる位置が存在し,磁石幅が広いほど,またヨ-クの厚さが厚く・短いほど外向きの磁力の働く範囲が広いことなどを明らかにした.磁力が外向きに作用する特性を効果的に利用することにより,原理的には磁性流体に自己補給機能をもたせることが可能であり,当初の研究目標の実現見通しが得られた. 実験的な検討としては,磁気ディスク装置用を対象として,スピンドルの高速回転化に伴い顕在化しているスプラッシング問題に着目し,装置のシ-ルギャップの磁束密度,磁性流体の充填量,差圧,回転速度をパラメ-タとして,ギャップ部に形成される磁性流体のメカニスカスの形状,スプラッシング発生時のメニスカスの大きさを実測した.スプラッシング発生条件がメニスカスの大きさによってほぼ一義的に決まること,充填量が少なく,磁束密度が大きく,差圧が小さい方が,スプラッシングが発生しにくいこと,またスプラッシングのきっかけが表面のミクロな形状に影響されることなどを明らかにした.また,磁気回路の拡大モデルを構成し,ヨ-ク表面の流動速度が表面の粗さに大きく依存しており,粗さによって流動速度を制御可能であることを確認した.
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