研究概要 |
本研究は長い助走部を経て十分に発達した乱流円管流が静止流体中へ吐出するときの噴流(以下,略して「円管噴流」と記す)の発達を人工攪乱注入法を用いて人為的に制御することを目的として行っている実験的研究である。初年度に得られた結果を要約すると以下のとおりである。 1.「円管噴流」は通常の縮流ノズルから流出する噴流(「ノズル噴流」)に比べ,周期的人工攪乱に対する応答は鈍感であるが,適当な周波数と振幅をもつ攪乱を与えることによって,流れ場の発達を制御できる。 2.人工攪乱の直接的効果が現れるのは円管内壁の延長線上を中心とする高せん断層部分であり,初期の速度変動振幅が噴流出口中心速度の10%以内では,攪乱は線形攪乱と類似の増幅減衰過程を辿る。 3.攪乱の振幅が最大に達するのは,噴流出口からの下流方向距離χがχ/D≒0.75(D:円管内径),攪乱の周波数fがfD/Uo=0.6〜0.7(Uo:出口中心流速)である。 4.fD/Uo=0.2〜0.9の範囲の周波数をもつ人工攪乱を与えると,乱流変動が顕著な増幅を示し,高せん断層部分の下流への広かりが増すために,噴流中心速度の減衰が速められる。一方,fD/Uo=1.2〜1.7の範囲では,逆に乱流変動が抑制される。この効果は前者(乱流増幅)の場合ほど顕著ではないが,その機構を探ることは,工学的観点からも重要であると思われる。 5.人工攪乱を加えない場合にも,「ノズル噴流」と同様に,速度変動中に或る卓越した周波数が存在する。この周波数fpはχ/D=3〜4の位置において,従来から知られている噴流固有モ-ド:fpD/Uo=0.3〜0.5とほぼ一致するが,局所の運動量厚さθを用いると,χ/Dのより広い範囲に渡って,fpθ/Uo〓0.04となっている。
|