本研究は工学的に重要な高レイノルズ数流れの乱流解析を実用的な時間平均型乱流モデルにより精度よく行うため、代数応力方程式モデルを新たに開発すること、またこのような乱流計算を可能とする非圧縮性流れの曲線座標系基礎式の効率的計算手法を確立することにある。 まず、従来多用されている代数応力方程式モデルの弱点を克服するため、主としてせん断乱流にみられるレイノルズ応力の非等方性と自由乱流にみられる等方化ならびに減衰過程を表現できるレイノルズ応力の代数表示式を導出し、新たな代数応力方程式モデルを提案した。この導出過程では、レイノルズ応力の輸送方程式に基づき、輸送項を代数化する手法がとられるが、従来の手法(例えばRodi近似)で無視されてきたレイノルズ応力の履歴効果を含む項が非常に重要になることが明らかになった。したがって、本モデルではこの履歴項が含まれるよう代数化が図られ、非等方性乱流が瞬時に等方化するなどの非物理的解を与える従来のモデルの弱点を解消した。次に、本モデルの妥当性を明らかにするため、直接シュミレーションによる信頼性の高い一様非等方乱流のデータベースを用いて、モデルの検証を行った。その結果、レイノルズ応力の時間発展過程をよく予測できること、特に従来のモデルでは定性的な傾向も予測できないせん断応力成分の時間変化を非常によく再現できることが判明し、履歴効果に関する有用な知見を得るとともに、複雑乱流場の計算に指針を与えることができた。 一方、これまで開発してきた一般曲線座標格子を用いた陰的SMACスキームを非定常3次元流れに拡張し、格子点数百万を超える大規模な数値シュミレーションを行い、3次元後方段付き流路内の非定常流れの構造を明らかにするとともに、乱流解析用計算コードとして適合性に富む高効率のスキームであることを検証した。
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