乱流混合層や非定常はく離流れの解析に有効な離散渦法を、乱流の渦特性の直接的なモデル化法として発展させることを目的として、本研究の最終年度である本年度には、研究計画に沿って次のような研究を実施し、その成果を得た。 1.昨年度開発した渦輪の干渉問題をシミュレートするプログラムを改良し、従来から実験および数値解析により知られている二つの渦輪の干渉問題における渦管のつなぎかえ現象や渦度の輸送の観点から、渦要素として渦糸、ボートンおよびブロッブを使い分けることによる乱流渦塊の微細化や合体を表現する手法の有効性を系統的に調べ、このようなモデル化が可能であることを明らかにした。 2.渦輪の干渉問題により試験的に開発した乱流渦要素モデルをRe数が10^4程度の球まわりの流れに適用し、出発流における大規模渦構造形成の機構や軸対称性のくずれ始める過程等を水流可視化実験結果と比較しながら検討し、モデルの有効性をある程度確認できた。また、計算機能力の都合上、乱流特性の統計量を得るための長時間計算は現在も進行中であり、この結果を得てモデルの総合的評価が行われる。 3.乱流渦要素として、従来から開発を進めてきた渦糸要素、ボートン要素およびブロッブ要素を、渦度の生成環境や対流・消散過程に応じて使い分ける概念の基礎を構築し、応用として二次元の円柱および角柱の高Re数流れおよび後方ステップ流れに適用し、良好な結果を得た。 以上の研究成果の一部はすでに論文および口頭発表により公表している。本研究成果により、これまでの離散渦法を簡便でしかも高精度な乱流非定常解析法として発展させることが可能であり、今後の二次元および三次元乱流への系統的な応用開発の段階を経ることにより、工学的に広い分野で汎用性の高い乱流計算法としての利用が期待される。
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